コラムVol.53 成人になるときに考えるべきこと

2024年2月9日
コラム執筆者の写真
波多間 純子 (はだま じゅんこ)
(株)bloom代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、キャリアコンサルタント。「お金しだい」の人生から「自分しだい」の人生への選択をサポート。長年、家計相談に携わり、相談窓口ひとつで計画から実行までをお手伝い。昨今はお金だけではないキャリアを含めた、その方の才能や適職を診断するワークショップを開催。関わった人すべての安心、豊かさをカタチにする。

成人になるときに考えるべきこと

2022年4月から18歳以上は成人とみなされるようになりました。すなわち18歳からは成人として身体的にも精神的にも一人前になったと認められる年齢です。社会的に自立した大人とみなされますので、これまでは必要なかった責任を求められるようになります。お金についても自ら管理をすることが必要になってきます。
そこで、今回は成人になってからおこる、知っておきたいお金のポイントをお伝えします。

契約の主体になる

成人である18歳になると民法上の「契約」の当事者となります。未成年であれば契約をする場合、親などの親権者の同意が必要です。さらに親権者の同意のない契約は原則取り消すことができました。しかし18歳以降は契約の責任を本人が負うことになります。契約上のトラブルで多い借り入れや悪徳商法は知識や経験の少ない若者も被害にあいやすいものです。巻き込まれないよう、より慎重な行動が望まれます。
そこで憶えておきたいのは「クーリング・オフ」制度です。契約をしたあとにやめたいと思った場合、一定期間は無条件で解約できる制度です。一定期間とは申込書面や契約書面を受け取ってから、訪問販売や電話販売では8日間、マルチ商法などの連鎖販売取引等では20日間です。ただし、インターネットショッピングやネットオークションなどの通信販売はクーリング・オフができません(特約条件がある場合や、品物が違うなどの場合は返品可能なこともあります)。購入する前にしっかり内容を確認し、すぐに決断しないことが大事です。
また、消費者トラブルを相談したい場合は「消費者ホットライン」を利用しましょう。局番なしの「188」にかければ、最寄りの消費者生活相談窓口を案内してくれます。

キャッシュレス決済は予算管理が大事

18歳をもって成人となれば、自立した大人として扱われます。成人ならば自ら金銭の管理を行うことが必要です。そこで、少しずつ自分なりのお金の管理を身につけていきたいものです。
昨今ではポイント還元メリットのあるキャッシュレス決済が推奨されており、電子マネーやスマホ決済などを積極的に使いこなしている方も多いでしょう。しかし、キャッシュレス決済は現金を使わないため、使った印象が残りにくく、案外管理が難しいものです。
キャッシュレス決済の中でも、クレジットカードやクレジットカードで自動的にチャージ(オートチャージ機能)ができる電子マネーを利用する場合は、特に注意が必要です。これらは支払いが後払いのため使いすぎてしまい、想定外の高額な請求に慌てることもあります。
そこで、予算管理がうまくできるまで、ひと月に使う予算額をカードごとに決めたうえで現金をチャージする方法をとることをおすすめします。あわせて、決済の明細や使った記録が確認できるスマホアプリで、残金等にこまめに目を通す習慣をつけましょう。

ちなみに、18歳からは親の同意なしでクレジットカードの作成が可能です(高校生を除く)。クレジットカードは翌月以降に支払いが発生しますので、つい使いすぎてしまうこともあるかもしれません。こちらも計画的な利用が肝心です。

積み立ての習慣をつける

自立した生活を送るには一定の貯蓄が欠かせません。学生の場合、定期的な貯蓄は難しいでしょうが、社会人になったら給与から一定額の積み立てを始めましょう。「ラテマネー」という言葉があります。毎日何気なく使ってしまうカフェで飲むラテ代程度の小さなお金という意味です。そのお金を節約し、貯蓄に回し続ければ大きな資産になります。さらに、積み立てを投資信託などの投資商品で行うこともよいでしょう。値動きする資産でも積み立てで行えば時間と金額を分散できます。結果、リスクを抑えながらリターンを得ることができます。若いということは老後までの時間がたくさんあるということです。時間を味方にしてラテマネー分でもこつこつ資産形成していけば、そのお金が将来のご自身に役立つだけでなく、その習慣そのものがかけがえのない財産となります。

国民年金に加入となる

20歳になると「国民年金加入のお知らせ」が届きます。国民年金とは原則65歳以降一生涯受け取れる国の年金制度です。加えて、一定の障害を負ったときには障害年金が、死亡したときには遺族が受けとれる遺族年金の給付も受けられます。なお、国民年金の加入は法律で義務づけられていますので、入らないという選択肢はありません。
保険料は20歳から60歳になるまでの期間支払い、払い方や金額は会社員や自営業といったその人の働き方によって異なります。たとえば、20歳の時点で会社員であれば勤務先が厚生年金保険料として給料から差し引き、会社負担分と合わせて納めてくれます。しかし、学生の場合は市町村に自ら保険料を納めなくてはなりません。うっかり未納のままでいると、将来の老後の年金の金額が減るだけではなく、未納期間等に起こってしまった傷病等に対しての障害年金が受けとれない恐れがあります。

保険料が払えない場合は「学生納付特例制度」を検討しよう

そこで活用したいのが学生納付特例制度です。20歳以上の学生本人の所得が一定以下の場合、申請すれば在学中の国民年金保険料が猶予されます。「猶予」とは学生の間保険料の支払いを待ってくれるという意味です。猶予期間中は年金加入期間とみなしますので先の障害年金等の受給要件を満たすことができます。保険料を支払う余裕がない場合はそのままにせず必ず住所地の市町村の窓口で申請をしましょう。
また、猶予された保険料は10年以内であればさかのぼって納めることができます。支払うことで将来の年金額を増額できます。

ご留意事項

  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。