コラムVol.18 教えて!ふるさと納税の仕組みとメリット

2023年12月12日
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奥野 美代子 (おくの みよこ)
CFP®(ファイナンシャルプランナー)、中小企業診断士、MBA。
デンマークのオーディオブランドで富裕層向けのマーケティング&PRに27年間携わった後、中小企業診断士/FPの資格を取得し、経営コンサルタントとして独立。
日本FP協会 平成24年「暮らしとお金の相談室」相談員、平成26年広報センター電話相談員などを歴任。30代から始めたライフプランに基づくマネープラン、2回のマンション購入と不動産賃貸、リストラ後の独立等、自らの経験に基づき、相談者の立場に立って、ライフプラン、起業、セカンドライフプランなどのアドバイスを行う。経営コンサルタントとして、クリニックや中小企業のマーケティングサポートや経営セミナーなどの講師も務める。

ふるさと納税の利用者大きく拡大!

毎年、年末が近づくと話題に上る「ふるさと納税」、マネー雑誌やテレビでも特集が組まれ、返礼品の人気と節税効果を背景に、年々利用者が増えています。「ふるさと納税」制度は、「生まれ育った故郷に貢献できる制度」、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として2008年に創設されました。

当初は返礼金を出さない自治体も多かったのですが、2012年以降、「ふるさとチョイス」「ふるなび」「さとふる」などの「ふるさと納税サイト」がオープンし、「返礼品で選ぶ」という文化が一般的になりました。自治体の返礼品競争が加熱し、2018年にかけて大きく利用者が増加しました。

2019年より返礼品の調達割合3割以下、地場産品に限るという「3割ルール」が厳格化されましたが、ニュースなどでお得な節税法として紹介されることが増え、ふるさと納税の人気は定着しました。利用者も年々増加し、2022年には2019年にくらべて2倍以上の約900万人が利用していることになります。社会貢献と節税ができて、返礼品の楽しみもあるふるさと納税の最新の活用方法を解説します。

ふるさと納税の受入額および控除適用者数の推移(全国計)
ふるさと納税の受入額および控除適用者数の推移(全国計)

出典:総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」等より筆者作成

ふるさと納税のメリットと仕組み

ずばり、ふるさと納税のメリットは、寄附金控除が受けられること、返礼品が受け取れること、居住地以外の自治体を応援できることです。このメリットについて、詳しく見ていきます。

「納税」というと税金を納めるイメージですが、実際に行うのは、都道府県や市町村(自治体)への「寄附」です。自分の税金の一部を使い、「故郷を元気にする」「賛同する自治体を応援する」制度として創設されました。選んだ自治体に寄附(ふるさと納税)すると、2,000円を超える寄附金額は、所得税と住民税から控除して(差し引いて)もらえるので、節税になります(一定の上限はあります)。

控除額の計算(例)
控除額の計算(例)

たとえば、2023年1月から12月の給与収入(税込年収)が700万円の会社員(独身または共働き)の場合、108,000円が控除の上限になります。108,000円まで寄附すると、2,000円を除く全額が所得税・住民税から控除されます(所得税は2023年度分から、住民税は2024年度分から)。自己負担額は、毎回2000円ではなく、年間を通して2000円です。

図の例では、細かい特例の計算は省きますが、所得税が20%の場合、所得税から19,600円還付(払い戻し)され、翌年の住民税はBから19,600円を引いた78,400円少なくなります。

控除できる上限額は、収入や家族構成によって異なります。総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で簡単にシミュレーションできますので、利用する前に確認しましょう。

さらに多くの人にとって魅力的なのが、寄附への感謝の気持ちとして自治体が用意するさまざまなお礼の品々、「返礼品」です。普段はなかなか手を出しにくい特選和牛、完熟フルーツ、港直送の鮮魚、地ビールなどのグルメや伝統工芸品、温泉利用券、家電品などが用意されています。

返礼品のイメージ。地域や寄附金額により異なる
返礼品のイメージ。地域や寄附金額により異なる

寄附をしてもらった自治体は、寄附金額の30%以下に相当する商品を地元の生産者等から購入し、お礼として返送します。ふるさと納税サイトには、全国的な流通網では販売されていない地域限定の商品なども数量限定で紹介されるので、地域産業を活性化する効果があるといわれています。返送品を送る諸経費を除いた残り約50%が、自治体の活動に使われることになります。

利用できる人

ふるさと納税は、実質的には2,000円の自己負担で、特定の地域社会に貢献した上で魅力的な特産品などをもらえる「おいしい節税制度」ですが、誰にでも同じようにお得というわけではありません。たくさん税金を払っている人の場合、控除額の上限金額も大きくなります。また扶養家族のいない独身の方やDINKs(自分たちの意思で子どもを持たない共働き夫婦)の場合も控除額上限が大きくなるので、上手に使うといいでしょう。

たとえば、年収400万円(独身または共働き)の場合の上限額は42,000円ですが、年収1,000万円(独身または共働き)の場合の上限額は180,000円です。180,000円を寄附することで、178,000円の税金が控除され、さらに魅力的な返礼品を受け取ることができます。上手に活用したいですね。夫婦共働きの場合は、それぞれで限度額まで利用することが可能です。

寄附先と返礼品の選び方

寄附する金額の目安が決まったら、次は寄附先と返礼品を選びましょう。
2022年度のふるさと納税利用自治体数は、約1800に上ります。寄附する自治体を選ぶには、専門のウェブサイトが便利です。「ふるさと納税」で検索するといいでしょう。

寄附する自治体を選ぶときに、「地域」「寄附金の使い道」「ランキング」「おすすめ」などさまざまな条件で絞込みを行うこともできます。最近は、返礼品ではなく「災害支援」や「子供の難病支援」など、純粋に寄附目的で利用する人も増えてきています。

専門のウェブサイトを利用するメリットは、(1)寄附先の選択、(2)寄附の申込み、(3)寄附金の支払いなどが簡単にできることです。寄附金の支払い方法としては、「クレジット決済」「コンビニ支払い」「QR・バーコード決済」などを選ぶことができます。

税金の控除手続き

自治体に寄附後、送付される「寄附金受領証明書」を使い、確定申告を行うと税金が控除されます。2015年以降は、確定申告の不要な給与所得者のために、1年間の寄附先が5自治体までなら確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる「ワンストップ特例制度」(※)が開始されました。2022年現在、過半数の利用者が「ワンストップ特例制度」を利用しています。

ふるさと納税制度は、何件申し込んでも1年間の寄附総額に対して自己負担は2,000円だけで、残額についての税額控除を受けることができます(一定の上限はあります)。年末に慌てて申し込もうとすると年内の受付に間に合わなくなる場合もあります。上限額を確認し、希望の返礼品を調べ、計画的に利用することをお勧めします。

  • ワンストップ特例制度は制度適用の条件があります。ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告を行う方(年収2000万円を超える所得者や、医療費控除等のために確定申告を行う方)は、確定申告で寄附金控除を申請してください。

ご留意事項

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