コラムVol.14 確定拠出年金(iDeCo)よりもローン返済のほうが有利な場合も?

コラム執筆者の写真
菱田 雅生 (ひしだ まさお)
1993年、早稲田大学法学部卒業後、山一證券株式会社に入社し営業業務に携わる。山一證券自主廃業後、独立系FPになる。以後18年にわたり、住宅ローンや資産運用を中心とした相談業務、原稿執筆、セミナー講師などに従事。2008年10月、 "ライフアセットコンサルティング株式会社"を設立、代表取締役に就任。

老後資金準備におけるiDeCoの優位性はかなり高い

平成13年に登場した日本の確定拠出年金制度(DC=Defined Contribution Plan)は、この制度を導入した企業にお勤めの方が利用できる「企業型DC」と、企業年金等のない企業にお勤めの方や自営業者の方などが利用できる「個人型DC」という2つに大別できます。

DC制度の基本的な建て付けとしては、企業型DCの掛金負担者が企業、個人型DCの掛金負担者が個人となっています(ただし、企業型DCのマッチング拠出や、給与または賞与から掛金を切り出すタイプの場合は、掛金の実質的負担者は加入者個人となっています)。

このうちの個人型DCについて平成28年に大きな法改正が行われ、平成29年1月から、それまで個人型DCの加入者になる(=掛金を拠出する)ことができなかった専業主婦(夫)の方や公務員の方なども加入できるようになったのです。平成28年に確定したこの改正に合わせて、個人型DCの愛称も公募され、iDeCo(イデコ)という愛称が付けられました。

iDeCo(個人型DC)では、専業主婦(夫)等の方の場合は毎月2.3万円まで、公務員等の方の場合は毎月1.2万円までという掛金の上限があるので、金額的にはそれほど多額の積み立てができるわけではありませんが、税制優遇が大きい制度なので、老後資金の準備のためには最優先して利用すべき制度だと言えます。

iDeCoよりもローン返済のほうが有利なケースも

しかし、住宅ローンなどの借金を返済中の人にとっては、手放しでiDeCoを最優先すべきだとは言えないことも知っておきましょう。特に、所得税の負担をしていない(=収入がない、または、収入が少ない)専業主婦(夫)等の方の場合は、掛金の所得控除の恩恵が受けられないので、iDeCoで老後資金を積み立てるよりも、その分をローンの返済に充ててしまったほうが、よほどiDeCoで高い利回りを得られない限り、経済効果は大きいはずなのです。

公務員等の方の場合も、所得控除は大きいのですが、仮に、毎月1万円をiDeCoで積み立てて年間12万円の所得控除を受けたとすると、節税効果は1.8万円または2.4万円程度(所得税・住民税の合算税率15%、20%でそれぞれ計算した場合)、40歳から60歳までの20年だと節税効果の合計は36万円または48万円程度になります(企業型DCで加入者がマッチング拠出を行った場合も同様の節税効果になります)。

一方、下の例のように、毎月約1万円をiDeCoで積み立てるのではなく、毎月返済額に上乗せして返済したとすると、残りの返済期間を5年短縮することができ、総返済額を約85万円も減少させることができるのです。

もちろん、このような経済効果は、ローンの条件などによってケース・バイ・ケースではありますが、iDeCoのほうが必ず有利になるのかというと、一概には言えないわけです。やはり、住宅ローンなどの返済に充当したお金は、借入金利で運用するのとほぼ同じ経済効果が得られるわけですから、現在のローン金利が過去最低水準にあるとはいえ、1%や2%の利回りで確実に運用できる金融商品が存在しない現状を考えると、ローン返済のほうが有利になる可能性は高いといえるのです。

ローン返済と老後資金準備は、バランスを考えながら有利なほうを優先的に選択し、実行していくべきものですので、慎重に判断しながら実行していくようにしましょう。

例)ローン残高2,000万円、借入金利1.5%、残り返済期間30年

毎月返済額69,024円
金利負担を含む総返済額…約2,485万円

毎月返済額を約1万円上乗せ
毎月79,987円まで返済額を引き上げると、
残りの返済期間を25年まで5年短縮!

金利負担を含む総返済額は、約2,400万円。
約85万円の節約が可能に!

ご留意事項

  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、すべて執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。