コラムVol.11 投資の本質とは-なぜ分散投資が王道なのかを知る-

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神戸 孝 (かんべ たかし)
早稲田大学法学部卒業。1980年、(株)三菱銀行入行、イマジニア(株)の設立に参画後、1987年日興證券(株)入社。以後一貫してFPサービスを中心とするマーケティング手法の企画・開発に携わる。各種マーケティング用ツール及びシステム開発、商品開発、各種講演会・研修会講師、新聞・雑誌等へのFP関連記事執筆等により、資産運用に強いFPとしての評価を確立する。
1999年、日興證券(株)を退社後、FPアソシエイツ&コンサルティング(株)を設立。独立系FPとして自ら個人・法人等のコンサルティング、各種講演会・研修会講師などを行う傍ら、全国の独立系FPのための支援ビジネスも展開している。

まとまったお金の運用は分散投資で

当コラムのVol.6「投資の本質とは-投資と投機の違いを知る-」でお話しした通り、個人の資産運用の王道は、成長が期待できる投資対象を見つけ、その成長を待つためにも長期投資を行うことですが、もう一つ重要なポイントとして分散投資が挙げられます。しかし、実際に意味のある分散投資を行っている人は意外に少ないようです。お客さまとお話ししながら、その最大の理由は、分散投資を何故行うべきなのかの理由がはっきりわかっていないからだと感じます。そこで、今回は分散投資にはどのような効果があるのかについてご説明しましょう。

複利効果を味方にするには「ブレ」が小さいことが条件

短期の売買を繰り返すのと違い、長期投資では複利運用を行うことが資産を増やすための近道になります。長期投資を行いながら複利効果を高めるためには、儲かったり損したりを繰り返すのではなく、できるだけ収益のブレ(=リスク)を抑えた運用を行うことが重要なのです。

図表①は、値動きの異なる2つの金融商品に4年間投資を行った結果を比較しています。商品Aは値動きが大きく、1年目に10%、2年目に20%儲かりましたが、3年目には20%損失を出し、4年目で10%回復したとします。4年間の平均収益率(騰落率)は5%となります。一方、商品Bは値動きが比較的おとなしく、1年目のリターンは6%、2年目が8%、3年目はマイナス2%で、4年目は6%だったとすると、平均収益率は4.5%となります。この2つの商品に1000万円ずつ投資をして複利運用を行った場合、4年後は平均収益率の低い商品Bの方が、何と資産額が大きくなっています。実は複利運用というのは両刃の剣のようなもので、マイナス側にも働くのです。ブレが大きいAのような商品では、せっかくの複利効果が3年目のように大きくマイナス側に働いてしまうことがあります。積立投資の場合と異なり(注)、まとまったお金の運用では、ブレが小さい運用の方がお金は増えやすいのです。

図表① 商品Aと商品Bにそれぞれ1000万円投資した場合
商品Aと商品Bにそれぞれ1000万円投資した場合

分散投資の効果

運用中のブレを小さくするためには、値動きの異なる商品に「分散投資」をすることが重要です。

図表②は、過去20年間について、毎年国内の株式だけに年始に投資し、その年の年末に売却した場合の1年間の収益率を表しています。60%近く利益が出た年もあれば、40%損失を出した年もあり、収益のブレはたいへん大きくなっていて、マイナスの収益率となってしまった年が8回もあることがわかります。一方、図表③は、国内の株式と国内の債券に半分ずつ投資をした場合の1年間の収益率の推移です。図表②とくらべると、国内の株式だけに投資をする場合に比べ、ブレがだいぶ小さくなっていることがわかります。

さらに投資対象を増やし、国内の株式・債券と米国の株式・債券の4つの資産に25%ずつ投資をした場合の収益率を表したものが図表④です。図表③以上にブレが抑えられ、収益がマイナスになった年は5回だけで、図表②や図表③と比べて回数が少なくなっていることがおわかりいただけるでしょう。

図表② 国内株式のみに投資
(TOPIXに100%投資)
国内株式のみに投資
図表③ 国内の株式と債券に50%ずつ投資
(TOPIX、日本長期債に50%ずつ投資)
国内の株式と債券に50%ずつ投資
図表④ 国内と米国の株式・債券に25%ずつ投資
(TOPIX、日本長期債、S&P500、米国長期債に25%ずつ投資)
国内と米国の株式・債券に25%ずつ投資

リスクをコントロール

単純に4つの資産に同じ金額ずつ分散投資を行うだけでも、上記のように収益のブレを小さくする効果が期待できます。まとまった資金の運用では、国内外の株式や債券にREITなども加えて、各資産の比率を考えながら、ご自身のリスク許容度(どれくらいのブレまでなら我慢できるか)に見合った組合せ(ポートフォリオ)を作って長期運用を行うことがたいへん重要になります。

リターンについては様々な要因で大きく変動するのが一般的で、コントロールするのは難しいのですが、リスクについては分散投資を行うことで、「これくらいのブレまでにとどめたい」という希望に沿って、かなりの程度までコントロールすることが可能なのです。

資産を増やして行くためのポイントは、自分ではコントロールが難しいリターンを追い求めることよりも、リスクをコントロールすることを優先し、複数の資産にバランスよく分散投資をして大きく負けないことを心がけることです。「急がば回れ」は投資の世界でも有効なのです。        

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