コラムVol.11 分散投資とは?投資の王道でリスクをコントロール

2024年2月9日
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神戸 孝 (かんべ たかし)
早稲田大学法学部卒業。1980年、(株)三菱銀行入行、イマジニア(株)の設立に参画後、1987年日興證券(株)入社。以後一貫してFPサービスを中心とするマーケティング手法の企画・開発に携わる。各種マーケティング用ツール及びシステム開発、商品開発、各種講演会・研修会講師、新聞・雑誌等へのFP関連記事執筆等により、資産運用に強いFPとしての評価を確立する。
1999年、日興證券(株)を退社後、FPアソシエイツ&コンサルティング(株)を設立。独立系FPとして自ら個人・法人等のコンサルティング、各種講演会・研修会講師などを行う傍ら、全国の独立系FPのための支援ビジネスも展開している。

分散投資とは?

分散投資とは、異なった複数の投資商品に分散して投資することで、投資リスクの低減を目的とする投資手法です。値動きの異なる金融商品を同時に保有することで、ひとつの商品の価格が下がっても、別の商品の価格上昇で損失を少しでもカバーできるようにしておくことができます。

まとまったお金を分散投資する理由

コラムVol.6「投資の本質とは-投資と投機の違いを知る-」でお話ししたとおり、個人の資産運用の王道は、成長が期待できる投資対象を見つけ、その成長を待つためにも長期投資を行うことですが、もう一つ重要なポイントとして分散投資が挙げられます。しかし、実際に意味のある分散投資を行っている人は意外に少ないようです。お客さまとお話ししながら、その最大の理由は、分散投資を何故行うべきなのかの理由がはっきりわかっていないからだと感じます。そこで、今回はまとまったお金を分散投資で運用するとどのような効果があるのか、ご説明しましょう。

まとまったお金の運用では、「ブレ」が小さい運用の方がお金は増えやすくなります。いいかえますと、お金を増やすためには、複利効果を味方にして、ブレを小さくすることが必要条件となります。つまり、長期投資を行いながら複利効果を高めるためには、短期売買のように儲かったり損したりを繰り返すのではなく、できるだけ収益のブレ(=リスク)を抑えた運用「分散投資」を心がけることが重要なのです。

複利運用の効果

図表1は、値動きの異なる2つの金融商品に4年間投資を行った結果を比較しています。商品Aは値動きが大きく、1年目に10%、2年目に20%儲かりましたが、3年目には20%損失を出し、4年目で10%回復したとします。4年間の平均収益率(騰落率)は5%となります。一方、商品Bは値動きが比較的おとなしく、1年目のリターンは6%、2年目が8%、3年目はマイナス2%で、4年目は6%だったとすると、平均収益率は4.5%となります。この2つの商品に1000万円ずつ投資をして複利運用を行った場合、4年後は平均収益率の低い商品Bの方が、なんと資産額が大きくなっています。実は複利運用というのは両刃の剣のようなもので、マイナス側にも働くのです。ブレが大きいAのような商品では、せっかくの複利効果が3年目のように大きくマイナス側に働いてしまうことがあります。この図表1の結果から、積立投資*の場合と異なり、まとまったお金の運用では、ブレが小さい運用の方がお金は増えやすくなるということがわかります。

図表1 商品Aと商品Bにそれぞれ1000万円投資した場合
商品Aと商品Bにそれぞれ1000万円投資した場合

分散投資の効果

運用中のブレを小さくするためには、値動きの異なる商品に「分散投資」をすることが重要と説明しましたが、実際どのくらいの効果があるのか見ていきましょう。

図表2は、過去20年間について、毎年国内の株式だけに年始に投資し、その年の年末に売却した場合の1年間の収益率を表しています。50%以上利益が出た年もあれば、40%損失を出した年もあり、収益のブレはたいへん大きくなっていることがわかります。一方、国内の株式・債券と米国の株式・債券の4つの資産に25%ずつ、同様に投資をした場合の1年間の収益率を表したものが図表3です。図表2とくらべると年による収益のブレ幅が抑えられ、全てのケースがプラス30%強とマイナス20%強の間に収まっていることがおわかりいただけるでしょう。

図表2 国内株式のみに投資
(TOPIXに100%投資)
国内株式のみに投資
図表3 国内と米国の株式・債券に25%ずつ投資
(TOPIX、日本長期債、S&P500、米国長期債に25%ずつ投資)
国内と米国の株式・債券に25%ずつ投資
  • 日本長期債:バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ日本国債(7〜10年)インデックス円ベース
    米国長期債:バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ米国債(7〜10年)インデックス円ベース

リスクをコントロール

単純に4つの資産に同じ金額ずつ分散投資を行うだけでも、上記のように収益のブレを小さくする効果が期待できます。まとまった資金の運用では、国内外の株式や債券にREITなども加えて、各資産への配分比率を考えながら、ご自身のリスク許容度(どれくらいのブレまでなら我慢できるか)に見合った組み合わせ(ポートフォリオ)を作って長期運用を行うことが大変重要になります。

リターンについてはさまざまな要因で大きく変動するのが一般的で、コントロールするのは難しいのですが、リスクについては分散投資を行うことで、「これくらいのブレまでにとどめたい」という希望に沿って、かなりの程度までコントロールすることが可能なのです。

資産を増やして行くためのポイントは、自分ではコントロールが難しいリターンを追い求めることよりも、リスクをコントロールすることを優先し、複数の資産にバランスよく分散投資をして大きく負けないことを心がけることです。「急がば回れ」は投資の世界でも有効なのです。

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