コラムVol.9 繰り上げ返済用に積み立てをするのはもったいない?

コラム執筆者の写真
菱田 雅生 (ひしだ まさお)
1993年、早稲田大学法学部卒業後、山一證券株式会社に入社し営業業務に携わる。山一證券自主廃業後、独立系FPになる。以後18年にわたり、住宅ローンや資産運用を中心とした相談業務、原稿執筆、セミナー講師などに従事。2008年10月、 "ライフアセットコンサルティング株式会社"を設立、代表取締役に就任。

ローンの見直し効果が大きい「繰り上げ返済」

前回触れた住宅ローンの「借り換え」と並んで、住宅ローンの見直し法として効果が大きいと言われるのが「繰り上げ返済」です。 繰り上げ返済とは、住宅ローンの残高の一部を、手元の資金を使って通常の返済とは別に繰り上げて返済してしまうことです。繰り上げ返済をした資金は、ローンの元金部分に充当されるので、それに対応する利息部分の負担がなくなり、総返済額を減らす効果が期待できます。

繰り上げ返済の方法には、次の2つがあります。1つが、毎月の返済額を変えずに残りの期間を短くする「期間短縮型」。もう1つが、残りの期間を変えずに毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」です。

利息の軽減効果の絶対額で比べると「期間短縮型」のほうが有利ですが、繰り上げ返済の効果が実感できるのは完済時になります。一方、「返済額軽減型」は、利息の軽減効果の絶対額では劣るものの、繰り上げ返済の効果を翌月から実感できます。そのため、どちらの返済方法がよいかは一概に言えず、現在の家計状況や、将来の家計見通しによって選ぶのがよいでしょう。

現在の毎月の返済が家計面から見て余裕がある状態なら、どんどん期間を短縮していく。毎月の返済が少し厳しい状態か、将来的に厳しくなりそうな状態なら、返済額を軽減していく。このように、状況に応じて選ぶわけです。また、複数回の繰り上げ返済が可能なら、期間短縮型と返済額軽減型を交互に実行するのもひとつの方法でしょう。期間短縮の有利さを得ながら、返済額軽減による目先の負担減も実感することができます。

積み立てより毎月返済額を増やすことのほうが重要

ただし、繰り上げ返済による利息の軽減効果が大きいからといって、繰り上げ返済用のお金をコツコツと積み立てていくのは本末転倒ですので要注意です。繰り上げ返済用の資金を積み立てられるくらいなら、その積立額を毎月返済額に上乗せして、残りの返済期間を短くしたほうが総返済額はもっと少なくなるからです。

特に、収入が安定的な会社員や公務員ほど、積み立てをして定期的に繰り上げ返済をしようと考えるのではなく、可能な限り毎月返済額を多くして、返済期間を短くしていけるようなローンの見直しを行ったほうが総返済額もより少なくできて有利だといえるのです。

返済計画

一方、収入が不安定な自営業者や、毎月の残業代の変化が大きい会社員などの場合は、収入の少ない月でも問題なく返せる返済額でローンを組んでおいて、収入が多かった月にしっかりと貯蓄をして、ある程度貯まったら繰り上げ返済を実行していくような返済計画のほうが安全です。そのような人は、複数回の繰り上げ返済を実行することで総返済額を少なくする方向で考えてもよいでしょう。

近年のような超低金利の時代においては、繰り上げ返済は資産運用法として非常に有利だと考えることもできます。余裕資金があるのであれば、積極的に繰り上げ返済をしてよいでしょう。しかし、あくまでも手元にある余裕資金や臨時収入などで行うようにしましょう。

仮にいま、繰り上げ返済用に積み立てをしている状態であったら、その積立額の分だけ毎月返済額を増額し、残りの返済期間を短くしてみてください。お金を貯めてから繰り上げ返済をするよりも、利息の軽減効果や期間短縮効果が大きいはずです。

なお、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を受けている人は、繰り上げ返済を行うことによって年末のローン残高が当初予定よりも減ると、その分だけ節税効果が小さくなりますが、通常は繰り上げ返済による利息の軽減効果のほうが大きいので、繰り上げ返済を優先したほうが有利になります(ローンの適用金利や住宅ローン控除の控除率によって異なる場合もあります)。ちなみに、住宅ローン控除の控除額は、年末のローン残高によって決まりますので、繰り上げ返済のタイミングは、年末ギリギリの12月に行うのではなく、年が明けた1月に行ったほうが、若干なりとも有利になる可能性が高いでしょう。

繰り上げ返済の手数料の考え方

以前は、繰り上げ返済には数千円から数万円の手数料がかかるのが通常でしたが、近年では、フラット35などのように繰り上げ返済手数料がかからない商品や、金融機関によっては手数料を無料にするところも増えてきました。新規の借り入れの際や借り換えの際には比較検討してみましょう。

ただし、繰り上げ返済手数料が数万円かかるところであったとしても、適用金利が0.1%でも低いのであれば、総返済額は少なくなる可能性のほうが高いので、よほど頻繁に繰り上げ返済をする計画でない限り、手数料を重要視しすぎないようにしましょう。

このように、繰り上げ返済は、将来の家計にとってプラスになる効果の大きいものではありますが、適用金利を引き下げる借り換えができたり、毎月返済額を増やして残りの期間を短くすることができたりするなら、それらを優先すべきだといえるわけです。一方で、住宅ローン控除や手数料については、あまり気にせずに繰り上げ返済を実行すべきだといえるでしょう。

ご留意事項

  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、すべて執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。