コラムVol.8 NISAの留意点を踏まえた商品選びのヒント

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目黒 政明 (めぐろ まさあき)
1983年、慶応義塾大学法学部卒業後、大和証券に入社。1987年、独立系FP会社に転職し、FPとしての活動を始める。1992年、MMIライフ&マネープランニングを設立。2002年、個人を対象に幅広くFPサービスを提供する生活設計塾クルーの取締役に就任。2010年、生活設計塾クルー代表取締役。資産運用アドバイスを専門とし、運用相談、新聞・雑誌等での原稿執筆、マネーセミナーの講師などを務めている。

NISAは中長期投資が基本

NISA(少額投資非課税制度)では、年間120万円まで、上場株式や公募株式投資信託などに非課税で投資ができます。非課税運用期間は、投資した年から最長5年間です。

NISAでは、短期的な値上がり益を狙った投資も可能ですが、短期間で値上がり益が期待できるものは、値動きが大きな商品でなければならないので、逆に見通しを誤って大きな損失を被ることもあり得ます。このとき、NISA口座での譲渡損(値下がり損)は課税口座との損益通算や損失の繰越控除はできません。また、短期売買でNISAの年間非課税枠を使い切ってしまうと、次に魅力的な投資対象が現れても、その年はもうNISA口座で投資することはできません。
このように、NISAは短期間での売買を前提とした商品には適しておらず、中長期の保有で税制上のメリットを享受しやすい仕組みになっていると考えることができます。こうした点では、短期的な判断が必要な場合もある上場株式への投資より、中長期の投資が前提の投資信託のほうが基本的にNISAに向いた商品設計になっているといえるでしょう。

定期分配型か無分配型かの選択

投資信託への投資で、毎月あるいは隔月といった頻度で定期的に分配金を受け取りたい場合は、定期分配型ファンドを買い付けることに問題はありません。毎年、NISAの非課税枠120万円まで買い付けても、分配金を受け取る限り、NISAの非課税枠に問題は発生せず、分配金は全額非課税で受け取ることができます。

しかし、特に分配金を受け取る必要がない人が、NISA口座で定期分配型ファンドを買い付ける場合は注意が必要です。分配金を受け取る必要がない場合は、分配金は次の運用に回すことになりますが、NISA口座内で再投資を行うと、再投資した分配金の分だけ非課税枠を利用することになるので、その分の非課税枠を空けておく必要があります。

一方、運用収益を分配せず、収益部分をファンド内に留保して複利で運用していく投資信託もあります。この場合、運用収益は全て値上がり益という形で非課税で受け取ることができ、分配金の分だけNISAの非課税枠を空けておくといったことを考慮する必要はありません。
したがって、特に分配金を必要としない投資家の場合は、分配金を支払わない無分配型の投資信託のほうがNISAの非課税枠を効率的に利用できて有利ということになります。

リバランスの問題とバランス型ファンドという選択肢

中長期の運用でなるべく安定的なリターンを目指す場合は、分散投資が大事なポイントになります。このとき、投資信託を使えば、分散投資は手軽にできます。
ところが、個別の投資信託を組み合わせて分散投資をすると、購入後の価格変動によって、各投資信託への投資比率が当初とは変わってきます。そこで、定期的に各投資信託の比率をチェックして、比率が高くなりすぎたものは一部売却し、比率が低下したものを買い増して、バランスを調整する必要が出てきます。これを「リバランス」といいます。中長期の投資では、リバランスの実行も大事だといわれています。
しかし、NISAでは売却した部分の非課税枠を再利用することはできないので、120万円の限度額いっぱいまで各投資信託を購入していた場合は、少なくともその年はリバランスを行うことができません。

一方、1つの投資信託の中で、各資産への投資比率をリバランスしてくれるのがバランス型ファンド(資産分散型ファンド)です。この場合、NISAの非課税枠は影響を受けず、投資家もリバランス実行の手間が省けます。

中長期の投資で安定的なリターンを目指したい、NISAの非課税枠を効率的に活用したいといった場合は、個別ファンドの組み合わせ投資よりも、バランス型ファンドのほうが適しているといえる側面があります。ただし、バランス型ファンドにもいろいろな商品があるので、リスク許容度の違い等によって選ぶべき商品は変わってきます。

  • リスク許容度:投資家の許容できるリスクの範囲のことで、資産運用に伴い発生するリスク(損失)をどの程度受け入れられるかの度合。

また、分散投資やリバランスは運用資産全体で考えることが大事なので、運用資金が豊富な投資家の場合は、NISA口座内だけのバランスを考えてもあまり意味がありません。こうした投資家の場合は、分散投資は課税口座での投資も含めて考えるべきで、非課税というメリットがあるNISA口座では高いリターンが期待できる商品を中心に投資するという選択肢もあります。逆に、運用資金が小さく、NISA口座の非課税枠に余裕がある投資家の場合は、自分にとって魅力的な個々の投資信託を組み合わせて投資し、分散投資とリバランスを自分で実行するという選択肢もあります。

以上のように、NISA口座で投資する商品の選択にあたっては、分配金を受け取るか否か、リバランス実行の考え方、運用におけるリスク許容度、運用資金の規模等を考慮し、ご自身の資産形成に合った商品選びをすることが大切です。

NISAの主な注意点
NISAの主な注意点

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